「一期一会」
私はフランスで生まれ育ちました。そして二〇年近く前、
独特の文化に惹かれ、日本に居を定めました。
武道を修め、茶道を学び、ついに自ら作陶するに至っています。
焼き物は土と火の芸術、やればやるほど奥深い仕事で、
私はもうこの魅力から離れられそうにありません。
窯の名の由来にもなった塩釉(えんゆう)とは、
十二世紀にドイツで生まれた技法です。
作品に釉薬をかけずに焼締め、炉内温度が一三〇〇度になる前、
窯の中に岩塩を投入します。
揮発した塩から発生するナトリウムと土に含まれるシリカなどが反応し、
さまざまな色合いに発色し、それが巧まざる釉薬となるのです。
塩を投入する際の温度や、
塩のかかり具合によっても微妙に色調が変わります。
どれひとつとして同じものはありません。
まるで神の息がかかったような仕上がりに、
私は茶道で習ったひとつの言葉をいつも想い浮かべます。
一期一会。
さあ、そろそろ窯を開ける時間です。
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